MIMによるギア加工品について

2017/09/07

ギアとは、「伝動車の周囲に歯形を付けて確実な動力伝達を可能にした機械要素である。」とされており、歯車本体もしくは歯車を組み合わせた伝動装置の事を指します。

使用する目的としては、減速や増速、回転軸の向きや回転方向を変えたり、動力の分割などに用います。

 

ギアが使用される環境としては、自動車のエンジン回りや産業機械・医療機器などの駆動部で使用されており、

与えたエネルギーを機構内で伝搬させ、駆動部分に与えたエネルギーを伝えることが目的となります。

 

当社でもMIM技術を活かすことで、微細なギア加工品の成形を行っており、

これらの業界に対する納品実績も多数保有しています。こちらのエンジニアコラムではギア部品の主な種類と当社で製作を行った製品事例について、紹介をいたします。

 

 

ギアの構成

まずは、ギアについて理解する為に構成要素について説明をします。

ギアというのは、駆動ギア被動ギアという2つの部品により構成されており、後に説明をするギアの種類はこの2つのギアの軸の関係性から大きく分類が行われています。

 

まずはこの2つの役割についてギアの機能面から考えると、あくまでギアは外部から与えられた力を伝搬することにあります。

つまり、元々の伝えたい力である“外部からの作用する力”を受けるギアとそれを伝搬させる為に使用するギアで構成され、機能が発揮されます。

 

 

 

その為、ギアを検討する際にはこの二つの部品の組み合わせを検討することが重要であり、

駆動ギアと被動ギアの役割を理解することでギアの性能を発揮させることができます。

 

 

 

例えば、減速ギアであれば駆動ギアの径が小さく、被動ギアの径を大きくする、

もしくは駆動ギアに対して、被動ギアの歯の山数を減らすといった組み合せとなります。

 

 

一方で力の向きを変える場合には、ギア位置を垂直にするなど、ギアのかみ合わせ方向を変化させます。

このように機構部に伝えたい力を調整する為に、ギアを使用することが多く、自動車はもちろん、産業機械には必須の機械要素で

今後の自働化やロボット化の波の中ではニーズが高まっていく部品の一つと言えます。

 

 

ギアの種類

次にギア種類についてです。前項でギアを使用する目的についてギアの機構と共にご紹介をしましたが、

その機構を充たす為には、単純な形状のギア(円筒形状で主軸に対して垂直方向に山谷が形成されている。)だけは不十分であると言えます。

 

 

 

下記に、ギアの中でも使用頻度が高い(機械の構成部品として度々目にする)ギア形状について紹介をします。

まず、ギアの分類について、この分類は駆動ギアと被動ギアのギア軸の関係位置によるのが最も一般的で、平行軸、 交差軸、食い違い軸の3つに分類されます。

 

 

平行軸のギアには、平歯ギア、ヘリカルギア、内歯ギアがあり、

交差軸のギアには、ベベルギア

食い違い軸ギアには、ねじギア等があります。

下記に、各ギア製品の特徴について記載をしています。

 

平歯ギア(平歯車)

平歯ギアは非常にポピュラーなギア部品で、歯が回転軸に平行に切られた部品です。

この形状のギアの加工は容易であることから、動力伝達用に最も多く使われている形状のギア部品です。

 

 

内歯ギア(内歯歯車)

平歯ギアとかみ合うもので、円筒の内側に歯が作られている歯車です。

主に、遊星歯車装置とかギヤカップリングなどに使われています。先に紹介した平歯車の一種としてされており、

内側に歯がついている歯車の事を指します。内側に噛ませるため小口径の歯車としか組み合わせられないという面もあります。

 

ヘリカルギア(はすば歯車)

平行軸のギアに分類をされますが、平歯ギアとの大きな違いとして、

歯を軸線に対して斜めに切っている点にあり、いわゆる螺旋状のギアとなっています。

この形状となっている利点は、同時にかみ合う歯数を増やすことができ、歯当たりが分散されるので音が静かで、

トルクの変動が少ないと移転に特徴があります。一方で、トルクがかかると推力が発生するので、軸受け構造が複雑となってしまいます。

 

ベベルギア(かさ歯車)

べベルギアとは、駆動ギア・被動ギアの軸が交差する形のもので、円錐面上に歯を刻んだギアで広げた傘のような形状をしていることから

日本語では、かさ歯車と呼ばれています。交差軸というのは、ギア同士の軸が平行でない場合を指しており、角度がついた軸の間で動力を伝達する際に用いられるギアとなります。

ヘリカルギアの中でも日本名で、すぐばかさ歯車とはすばかさ歯車と呼ばれる二つの種類のギアが存在しており、

一般的には入出力の2軸を同一平面上とし、平歯車を円錐状にすぼめた形のギアがすぐばかさ歯車、はすば歯車を円錐状に窄めた形をはす歯がさ歯車と言います。

自動車の駆動軸などでよく用いられるギア形状と言えます。

 

 

ネジギア

こちらは、円筒歯車の対を食い違い軸間の運動伝達に利用したときの名称で、その為に食い違い軸ギアと呼ばれています。

はすば歯車どうし又ははすば歯車と平歯車の組合せで使われるギアで、負荷が小さいものに限定されてしまう点がデメリットと言えます。

このように、様々な種類があるギアの中から、必要となる機構を検討することで必要となるギア形状を設計し、材質の選定・加工が行われます。

 

 

ギアの加工方法

ここまでで必要となるギアの機能・形状・材質について検討を行いました。

そこで、ここからは材質・形状などを考慮した上で、どのように加工を行うか?について記載をします。

ギアの加工で最も用いられる方法として挙げられるのが円盤素材に対して歯を削り、加工するいわゆる切削加工があげられます。

切削方法は、その歯の削りだしの方法で分類が行われ、「創成法」と「成形法」の2つに大別されます。

 

 

創成法とは、円盤にラック形(ベルト形状)の切削工具を押しつけることで、円盤の周囲を削り込む加工方法です。

この加工方法の代表例がホブ盤による加工で、精度の高い歯車ができる反面、加工コストがかかるデメリットがあります。

次に、成形法は歯車の溝と同じ形状をした切削工具を用いて、フライス盤で加工する方法です。専用の加工機を用いることなく歯車を量産することが可能な方法となります。

これらは、いわゆる削りによる加工ですが、これ以外にも塑性加工によるものもあり、鍛造や当社が得意とするMIMによる成形などもあります。各々の方法は、加工するギアの大きさ・精度・数量によってメリット・デメリットがありますので、ユーザーの視点に立つと『コスト×品質』を考慮して、加工方法を検討しなければなりません。

 

 

MIMによるギアの成形とニーズ

ここからは、当社の加工技術であるMIM(金属射出成形法)を用いて、成形を行ったギアについて、事例と共に紹介をしていきます。

 

繰り返しとなりますが、一般的にギアというと切削による削りだしで加工を行うことが多く、自動車部品などであればホブ盤等を用いて加工されます。

一方で、近年の科学技術の進歩により、機構部品のダウンサイジング化が進み、切削加工だけではできない領域が存在するようになってきています。

どのようなギア製品であるかというと、いわゆるミクロン台のギア部品です。

 

ミクロン台のギア部品は、工具サイズに限界がある為に精度・サイズ面で加工不可となることがあります。

また、材料によっては加工そのものが難しいこともあり、量産加工を行う上で他工法を検討する場合があります。

そのような場合に、当社ではMIM技術を活かした、高精度微細ギア部品の試作~量産加工の提案を行っています。

当社の名前に“マイクロ”とあるように金属射出成形技術を活かした微細と呼ばれる分野を得意としています。

 

これまでにも、当社には「機械加工では小さすぎて加工ができない・・・」「刃物が入らずに加工ができない・・・」と言った相談があり、

「日本のどの会社でも作ることができない、超小型のギアを量産してほしい」というニーズにお応えしてきました。

 

下記には、当社のギア製品の加工実績の中でも、最も微細な部品や異形状により切削では加工不可といった特徴のあるギアについて紹介をします。

 

①切削では加工不可となるZ=39歯数、 モジュール2の微細歯車(微細ギア)

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こちらの微細ギアの特徴としては、内歯歯車の加工を行っている点に特徴があり、

モジュールは0.045までの実績を保有しています。また、精度面でも±0.05mmの寸法要求があるのことで、機械加工では困難であると言えます。

一方で、MIMであればこのような微細ギアの加工を実現できることはもちろん、量産性にも優れており、月産で10万個程度の加工が可能となっています。

 

 

 

 

②切削では加工が不可能と言える、1gのベベルギア、1.1gのマイタギアを実現

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写真の製品は先にあげた分類でいくと、公差軸ギアというもので伝搬させる力の方向を変更させる機構となっています。

一般的に、径に対して斜めに加工を行う様なべベルギア形状品は専用機を用いて機械を行うことが一般的で、

こちらの製品のような微細形状の場合には、加工が難しく、量産は不可能であるとされています。

しかし、MIMであればこのような形状のギアの加工も精度・品質面を安定させつつ、量産加工が可能となります。

 

上の2事例を含め、当社では様々なギア部品の製造を行っています。①の事例にもあるようにギアの大きさはモジュールという単位で表されます。

これはギアのピッチ円直径をギアの歯数で割った、指数のことを言います。

一般に機械加工によるギア加工には限界があるとされており、モジュール 0.2以下となると加工が不可となる場合があります。

その為、これよりさらに小さくなると量産性が極めて悪くなってしまいます。その結果、MIMによる加工方法が検討され、量産性にも優れた提案が可能となります。

産業機械はもちろん医療ロボットなどの市場は拡大傾向にあり、その構成部品である微細ギアのニーズは今後も高まることが予想されます。

 

 

今後も当社では、微細ギアの製品事例を下記に更新していきます↓↓↓

http://micro-mim-japan.com/caselist/gear

微細ギアの加工で「機械加工では不可とされているが、必要な部品なのでぜひとも実現したい!」という方は、相談ください。