技術ニュース_vol.12配信

2019/06/27

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

バインダのお話

MIM (Metal injection molding, 金属粉末射出成形) は金属粉末をバインダと呼ばれる熱可塑性樹脂と混練して作製したペレット状のフィードストック(Feedstock ; FS)を金型に射出成形する金属部品の製造方法です.このバインダは最終製品に全く残りませんが,最終製品の品質を左右する重要な役割を担っています.後加工をせずに最終形状を得られるMIMにおいて製品形状を作る唯一の成形工程,その後に続く焼結工程においてバインダが与える影響を紹介します. 複雑な形状を得られるのがMIMの最大の特長であり、製品の最終形状を決定するのが成形工程です.この成形に欠かせないのがバインダで,バインダがあることで金属粉末を金型に射出することができ,その形状を転写します. 適切なFSは高い流動性,充填性を保ちながら,離型性がよく,成形時間も短く設定できるため量産性が高くなります. しかし,バインダは有機物であるため,最終製品に残留した場合,金属部品の機械特性を悪化させます.そのためバインダ成分は成形後,脱脂工程と呼ばれる工程で大半が分解されます.脱脂工程後残存するわずかなバインダも焼結工程ですべて分解されます.この脱脂工程後わずかに残留したバインダが焼結工程で金属粉末同士が結合するまで,最終形状につなぎとめています. MIM用FSのバインダには大きく分けて,①水溶性,②溶媒-熱分解,③触媒分解の3種類あります.水溶性バインダは水で,溶媒-熱分解バインダは有機溶媒あるいは熱で分解されます.触媒分解バインダも熱で分解されますが,酸雰囲気中で熱分解温度よりも低い温度域でバインダを分解します.酸雰囲気で処理するため,使用できる金属粉末の種類が限定されます. いずれのFSも購入可能ですが,新しい金属粉末,たとえば今までなかった小さい粒径の粉末,新しい合金系の粉末のFSが販売されるまでには,時間を要することが多いです. 弊社はバインダの調合はじめFSを内製しています.金属粉末に適切なバインダを選択し,同一の金属であっても製品形状によって配合比率を適正化したFSを用いて量産しています.従って,最新の金属粉末にも対応できるため,短期間で新しい技術の提案,量産展開が可能です.創業時から培ったプラスチック製造技術が,バインダ,FS開発力,成形技術を支えており,他社にはない技術でお客様の理想を実現します.

ISO13485の認証を取得しました

日本マイクロMIMの製造部門である太盛工業(株)は2019年5月にISO13485の認証を取得しました.医療分野の部品をご利用頂いているお客様には,弊社の品質保証の信頼性をより一層高められます.また,MIM部品の採用を検討されているお客様には,国際機関によって証明された品質の製品を提供できるという判断材料になります. 今後も日本マイクロMIMはμ-MIM技術を通して,医療分野に積極的に貢献していく所存です.

社員コラム

研究開発を担当しております奥山彦治と申します.大手エレクトロニクスメーカーを経て,2019年3月に入社しました.古いけど新しい,かつ知っていたつもりで知らなかった奥深い金属の世界で日夜迷走し,頭の老化を痛感する日々です. 週末はテニス,サイクリング,冬場はスキーで体の老化は防いでいます. 今後ともよろしくお願い致します.