技術ニュース_vol.19配信

2020/05/26

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

積層造形法 第1弾 金属3Dプリンターの進化

3次元積層造形技術の研究開発は2016年の閣議決定で国家プロジェクトとして推進すると位置づけられて以降,日本国内でも積極的な開発が進められています.金属3Dプリンターと表記されることの多い,金属粉末を使用した積層造形技術の動向をMIMメーカーの視点から紹介します.

金属粉末の供給方法と積層方法による分類

金属3Dプリンターに使用される金属粉末の供給方法には大きく分けて,ノズルを使用して積層している部分に随時金属粉末等を供給する方法と,ローラーを使用して一層分の粉末を有効作業域全体に敷きつめて供給する方法が挙げられます.ノズルを使用する方法は,粉末を必要な分だけ供給するので,金属粉末の歩留は高くなりますが,製品構造を支える柱を不足なく同時に作製する必要があるため,最終製品に対する材料歩留は低いです.一方,ローラーを使用する方法は,製品を作る部分以外にも粉末を敷きつめるため,金属粉末の歩留は低くなりますが,製品構造を粉末が支えるため,ノズルを使用する方法に比べて支柱の数を大幅に減らすことが可能です.支柱の数が減ることで,積層工程後の加工工数が減ります. 積層方法はその場で金属粉末を焼結していく焼結積層法と,接着剤を必要な部分に吐出して金属粉末を接着させ製品構造を作るバインダジェット法に分けられます.焼結積層法は積層工程と焼結工程が同時に行われます.一方,バインダジェット法はMIMと同じように,積層工程後,脱脂,焼結工程が必要です.焼結積層法は,レーザーや電子ビームを熱源として使用する方法が研究され,ここ数年で積層速度が桁違いに高くなりました.1時間に50cm3積層できる装置が2016年に発表されましたが,次世代機として250cm3/時間,さらに1000cm3/時間を達成できるような装置の開発が進められています.バインダジェット法は,プリンタヘッドの技術を応用できるため,焼結積層法に比べ積層速度が高いことが特長です.すでに60-100cm3/時間の積層能力を持つ装置が量産されています.

金属3Dプリンターで使用される金属粉末

MIMと同様,球体の粉末が使用されます.細かい粉末が混在していてもMIMにおいては製造に支障がありませんが,金属3Dプリンターにおいては,粒径が小さすぎる粉末は積層品質の低下を招きます.そのため,金属3Dプリンターに使用される粉末粒径は上限値だけでなく,下限値も定められている場合が多いです.また,焼結積層法では焼結工程中の還元反応が見込めないため,酸素などの不純物含有量の低い高価なガスアトマイズ法で作製された金属粉末が使用されます.これらの制限のため,粉末冶金業界の中でも高いといわれているMIMで使用される粉末よりもさらに高価です.

30µmの壁

粒径を厳しく制限した粉末を使用する,熱源を複数利用する,可動部分の制御に高精度なシステムを採用するなど,さまざまな最新の技術が組み合わされているのが金属3Dプリンターの装置です.ここ数年の金属3Dプリンターの発展は目覚ましく,また,その技術を使用しているほかの産業においても,大きな恩恵をもたらしたと言えます.しかし,目覚ましい発展に支えられてもなお,高精度,30µm以下の寸法制御にはまだ厚い壁が残っているようです.他の金属加工法と戦えるだけの生産性をつけてきていますが,いずれの金属3Dプリンターの種類でも30µm以下の精度で製造するには,さらなる技術躍進を待つ必要がありそうです. 一方,我々の製造部門である太盛工業が持つµ-MIM®や3D-MIM®は,5mm以下の大きさであれば±10µmの精度で複雑な形状を量産します.また,バインダジェット法で作製された試料は脱脂,焼結工程が必要になります.これまでのMIM製造で培った脱脂,焼結技術で金属3Dプリンター技術の発展に貢献できるよう協力していく所存です.

コラム

皆様こんにちは。ドイツ事務所の姫治です。今回は、イースター休暇が終わったドイツの様子についてお伝えいたします。 休暇前はウサギやたまごの形をしたお菓子をはじめとする商品が、国内のスーパーマーケットなどに出回ります。しかし、時期が終わると、売れ残った商品は用済みとでも言わんばかりに、驚異の半額セールに出されているのをそこかしこで見かけます。安くなったからといって味は変わりません!ので、僕はちまちま日本の家族や友達のお土産用に買っています。