技術ニュース_vol.21配信

2020/08/06

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

高硬度な材料について

特殊ギアや微小な医療機器部品において,硬度指定の引合いが増えています.今回はMIM業界で最も良く使用されるステンレスであるSUS316Lよりも硬度の高い材料について紹介します.

MIMで使用される材料粉末について

一般に,MIMで使用される材料粉末の価格は板材や棒材に比べて非常に高く,また,粉末冶金で使用される粉末の中でも高いです.板材や棒材はステンレスと炭素鋼で一定の価格差がありますが,MIMで使用する粉末は製造コストが大きな割合を占めるため,ステンレスと炭素鋼の価格差は小さいです.そのためMIM業界においては,耐食性を改善するメッキ加工などを省略できる,ステンレス粉末の消費割合が最も高いです. しかし,耐食性に加え,最近は高硬度の要求が増えてきました.特殊ギアなどにおいて硬度が求められることは一般的ですが,医療機器の分野で使用される微小部品においても,硬度が求められる場合があります.侵襲性の低い医療技術の開発が進む中,より複雑で微小な部品が多くなり,部品が微小になるほど,その部品にかかる負荷が高くなるため,高硬度の要求が増えていると考えられます.また,シミュレーション技術の進展により,部品設計の段階で発生応力や熱エネルギーを計算し,より正確な予測が出来るようになっていることも,背景の一つと考えられます. 高硬度の材料と言えば,工具鋼に代表される炭素鋼が挙げられますが,我々はSCM440に相当するAISI4140の量産実績があります.硬度は熱処理によって700-1000Hvに到達しますが,すぐに錆が発生してしまうため,焼結体の取り扱い,及び保管に特別な管理が必要です.一般的に炭素鋼は,耐食性を向上させるためメッキなどの表面改質,あるいは防錆油を使用して保管する必要があります.微小な部品の場合,均一な表面処理や,防錆油の洗浄が困難であることが多くなります. 硬度が高く,かつ耐食性の高い金属粉末を使用すると,これらの問題が解決できます.

μ-MIM®技術が手掛ける高硬度材料

我々は様々な種類の金属粉末を使用した実績がありますが,そのなかでも硬度とともに耐食性も高い材料を紹介します. SUS630または17-4PHと呼ばれるステンレスはMIMでよく使用されるオーステナイト系ステンレスのSUS316Lに比べ,適切な熱処理により硬度を高めることが可能です.SUS630は銅を析出させることで硬度を高くするため,析出硬化系ステンレスと呼ばれます.同じ析出硬化系ステンレスで,シリコンを析出させるシリコロイ*という材料も取り扱いがあります.シリコロイはSUS630よりもより高い硬度が得られます. また,ステンレスの中でも高い硬度を持つ材料としてSUS420J2があります.マルテンサイト系ステンレスで,こちらも適切な熱処理によって高硬度が得られます.この他にもチタン,タングステン合金の実績があります. 微小で複雑な形状を持つ高硬度かつ高精度な金属部品のお引合いをお待ちしております.

コラム

こんにちは.管理部の田中秀明です.ISO13485認証において,品質管理責任者としてQMSの構築及び運営を担当しています.高品質な製品を安定的に供給しつつ,業務の効率化を実現すべく,日夜マネジメントシステムの進化を図っています. 休日は月1回以上を目標として,LIVEに参戦しています.ジャンルは問いません.最近行った中で特に印象に残ったのは,12年ぶりの国内ツアーだった宇多田ヒカルさんのLIVEです.ちょうど世代で幼い頃からよくテレビジョンで見ていたので,実物の生声を聴けて感動しました. 新型コロナウィルスによる影響でLIVEがことごとく中止もしくは延期され,非常に残念です.LIVE配信やYouTubeの動画で耐え忍ぶ日々です.状況が落ち着き,またLIVEに通える日を心待ちにしています.