技術ニュース_vol.27配信

2021/03/25

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

タングステン(W)のMIMへの展開

W合金の試作可否に関する問い合わせが増えております.今回はWのMIMへの展開についてご紹介します.

Wとは

ご承知のように,Wは実用金属中最も融点が高く(約3400℃),かつ比重が鉄の約2.5倍で金(Au)とほぼ同等の19.3であるレアメタルの一つです. その物性を活かした用途は主に超硬工具に代表される産業分野ですが,我々の日常生活では,今や過去形ですが,蛍光灯や電球のフィラメントが最も身近な存在でした.また変わったところでは,比重が金と同等で,なおかつ金メッキが容易なので,偽造金に仕立て上げられるという不名誉な一面も持っています.現在は,放射線遮へい能力と融点の高さ,加工技術の発展により,X線CTの遮へい材やカテーテル手術のマーカーあるいは電気手術電極として,医療分野でも広く採用されています.またフィラメントとしても電球ではなく,放電用電極としてコピー機,空気清浄機に使われています. Wは世界各地に埋蔵されていますが,商業利用される高純度なW原料は産地は中国が大半を占め,希土類元素と共に貿易面での戦略物質として使われることもしばしばです. (参考:タングステンに関する情報 http://www.jtmia.com/index.htmhttps://www.nittan.co.jp/

W製品の製法・焼結

Wは融点が高いので,他の金属のような完全に液体にする溶解法は採られません.まず鉱石からパラタングステン酸アンモニウム(通称APT)というアンモニウム塩を作り、これを焙焼して三酸化タングステン(WO3)とし、さらに水素還元して精製されたW粉末鉱石から精製された粉末を成形し焼き固めるという粉末冶金法でインゴットを作製し,さらに機械的な負荷を加えて所望の製品形状に仕上げます. また,Wを主材とする種々のW合金についても同様に,W粉末と添加元素の粉末を混合して粉末冶金法で製造されます.この方法は,添加元素成分の融点以上に温度を上げ,添加元素の液相でW粉末を取り囲んで焼結するというメカニズムです.断面組織を見るといわゆる「海島構造」となっていて,添加元素の海にWの島が浮かんでいます.

MIMへの展開

粉末冶金法で作製するということと,Wは難加工材という両面で,W合金はMIMの製法に適っています.しかし,W粉末に適したバインダシステムと焼成方法の開発課題,さらにはMIMを必要とする複雑形状の要望がなかったということで,これまでW合金のMIM製品が市場で見られなかった要因だと考えられますが,冒頭申しましたように,昨今医療分野でのお引合いを頂戴する機会が増えてきました. 我々の有する要素技術を駆使して,現在MIMの新分野開拓に努力しているところです.

コラム

はじめまして.製造部で焼結を担当している中田です.入社1年目で,焼結の管理や製品の評価,焼結炉のメンテナンスを担当しています.MIMの優位性の確立や,作業効率改善に向けて,日々試行錯誤しながら,業務を行っています.自分が提案した改善案によって,焼結の生産性向上に寄与できたことはとてもやりがいを感じました. 趣味は,体を動かすことで,サイクリングやサッカーが特に好きです.最近は,コロナ下で外出する機会は減っていますが,京都の嵐山でウォーキングしています.ウォーキングは楽しく体を動かせることができるので,週末は観光名所をまわって楽しんでいます.