技術ニュース_vol.28配信

2021/04/27

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

MIMで使用する金属粉末の製造方法

今回は金属粉末の製造方法による粉末の違いと製品に与える影響について紹介します.以前発行したVol.11ではチタン粉末の違いを紹介しましたので,今回は鉄系粉末について紹介します.

MIMの金属粉末の条件

金属粉末射出成形(MIM)では平均粒径が10μm前後の粉末を用いて複雑形状を量産するため,粉末冶金業界の中でも小さい粉末を使用しています.さらに粉末の形状が球体に近いほど,流動性が高くなり生産性が高くなるため,細かく,球体に近い形状の粉末が得られるアトマイズ法で製造された粉末を採用する場合が多いです.さらに,我々のμ-MIM®技術はMIMの中でも小さく複雑な形状を持つ製品を取り扱っているため,流通しているMIM用アトマイズ粉末の中でも細かい粉末を使用しています.アトマイズ法の中では粉末の冷却媒体により水アトマイズ法とガスアトマイズ法に大別されます.チタンの場合は酸素との反応性が高いため,水を冷却媒体に使用した粉末は少ないですが,鉄系の粉末の場合は,特にステンレス粉末の場合は酸素との反応性が低いため,1950年代から水アトマイズ法による粉末の量産研究が始まっていました.

製造方法による粉末の違い

下の図はガスアトマイズ法で製造された粉末(左)と水アトマイズ法で製造された粉末(右)のSEM観察画像です. 粒径はほとんど同じですが,形状が異なります. 水アトマイズ法で製造された粉末は,ガスアトマイズ法に比べ酸素含有量が高く,粉末形状にばらつきがあるため,金属3Dプリンティングには不適である場合が多いですが,ガスアトマイズ法で使用する希ガスの値段が高騰していることに比べ,水アトマイズ法は製造コストが低く安定しているという利点のほかに,粉末製造時の冷却速度が非常に大きいので,アモルファス合金など微細組織が品質を左右する金属組成の粉末製造において再び注目されています. また,水アトマイズ法の高い生産性と安定性を活かす新組成ステンレス合金の開発も進んでいます.

アトマイズ粉末の今後

世界中の金属粉末メーカーは金属3Dプリンティング需要の高まりに応えるため,微細で形状の安定した粉末を製造でき,かつ生産性の高い最新の金属粉末製造設備を増設しています.安定した高品質な金属粉末が調達しやすくなる中,μ-MIM®技術の威力を発揮できる機会が増えてきていると感じています.微小で複雑な形状を持つ金属部品の量産をご検討でしたら,ぜひ我々にお問い合わせください.

コラム

昨年夏に入社した和田良一(60歳)です.技術開発に所属しています.大学(工学部)の専攻も前職での職務も高分子(プラスチック,ポリマー)を扱っておりました.モットーは「仕事も楽しめ!」でありまして,MIMプロセスのバインダー同様「縁の下の力持ち」的な社員を目指したいと思います. 新しいことを学ぶのが大好きな私の趣味は,旬の素材を使って美味しい料理になると考えられるレシピに,熱量×時間×触媒(スパイス)で挑戦することです.今年もホタルイカと菜の花を使って美味しいパスタが作れて嬉しかったです.