技術ニュース_vol.29配信

2021/05/24

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

今、注目されている持続可能な開発目標SDGs (Sustainable Development Goals)への弊社の取り組みをご紹介します。 SDGsは、17の目標と169のターゲットで構成されていますが、 日本マイクロMIMでは「地球環境」の分野で環境に優しいバインダを探索しています。 今回はその一部を紹介します。

環境に優しいバインダの探索 

当社の製品は生産性や加工精度に優れた環境に優しい小型金属部品であると自負しておりますが,金属粉末射出成形のプロセスに欠かせないバインダについても,環境に一層優しい新しい持続可能な発展目標(SDGs)を実現するバインダが無いか探しています.

SDGsなバインダとは

金属粉末を射出成形するMIMプロセスでは,原料金属粉末をプラスチックとワックスからなるバインダと溶融混錬し,ペレット形状に加工したフィードストックを射出成形します.バインダは脱脂+焼結工程で完全に取り除かれるため,最終製品にバインダは含有されておりませんが,焼結するまで金属粉を繋ぎ止める縁の下の力持ち的な役割を果たします.バインダは,金属表面に存在する官能基と馴染みの良い極性ポリマーの方がワックスやポリエチレンなどの非極性ポリマーよりも適していると考えられており,我々が使用しているポリオキシメチレン(POM,図1)も極性ポリマーです.極性ポリマーの中でどんなプラスチックがSDGsの実現に有効なバインダの候補として挙げられるでしょうか?

極性ポリマーとバインダについて

生分解性プラスチックとしても古くから知られているポリ乳酸(図2)を挙げられます.現在,数社が商業生産しているポリ乳酸ですが,主にトウモロコシが原料に使われています.エステル基という官能基を有するポリ乳酸がMIMプロセスの新規バインダとして開発できる可能性は大いにありますし,他の生分解性プラスチックからサステナブルな新規バインダ系を開発できる可能性についても探索しています.MIMプロセスのバインダ成分としてポリ乳酸を用いることができるような開発を行えば,現行よりもよりSGDsに近いMIMプロセスを実現できます. また,天然高分子であり二酸化炭素排出量が少ない寒天も候補に挙げられます.寒天はアガロースが主成分の多糖類で,極性ポリマーです.水溶性バインダーとして一部のMIM製造に使用されていますが,我々が取り扱う製品サイズでは上手く成形できなかった過去があります.他の多糖類としてはコンブやワカメから抽出して工業的に生産されているアルギン酸(図3)が挙げられ,これも極性ポリマーと考えることができるためバインダとして用いることができるかもしれません.SGDsを実現するバインダ開拓のため,広い探索活動を続けていきます.

コラム

4月13日-15日はタイのお正月(ソンクラン)でした.水掛け祭りとして有名なソンクランは,例年,世界中から多くの観光客が訪れる期間でもあります.この期間中は誰にでも水を掛けて良いので,街全体が水遊び場と化します.外へ出れば最後,四方八方から水を掛けられ,頬に白いペーストを塗られることでしょう.そんな時はほほえみながら,素晴らしきタイの文化に触れたことを喜びましょう.たとえ,あなたの大切なスマホが水没したとしても… 派手な一面が取り沙汰されるソンクランですが,仏像や目上の人の手に水を掛けて,お清めや敬意を表すというタイ仏教の伝統的な行事も行われます.タイの人々にとっては,故郷の家族や仲間と過ごす大切な帰郷の期間でもありますが,今年のソンクランは静かに,移動の制限が一日も早く解除されることを祈りました.