技術ニュース_vol.31配信

2021/08/30

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

MIMの脱脂工程

脱脂は他の金属加工法には見られない,粉末冶金法の特徴的な工程です.一般的な圧粉成形では,潤滑剤として添加されているバインダーの量が体積比で数%程度であるため,焼結工程の昇温部分で脱脂処理されており,明確な工程分離がされていませんが,MIMはフィードストックに体積比で40%程度ものバインダーが含まれているため,焼結工程と分けて脱脂工程として管理されています.今回はこの脱脂工程について紹介します.

脱脂工程の種類

バインダーとして使用されている熱可塑性の樹脂を分解する方法によって,熱,溶媒,触媒の3つに分けられます.もっとも簡単な方法は熱による脱脂で,拡散,浸透反応を制御することで分解反応を促します.溶媒を用いる方法は液体に浸漬するタイプと蒸気を使用するタイプに分けられます.溶媒は有機溶媒が最もよく使用されますが,他に水,二酸化炭素などの超臨界流体を使用する方法もあります.水を脱脂工程に使用する場合は,あらかじめ水と反応しやすいポリビニルアルコールやポリエチレングリコールなどの特定の樹脂を使用したバインダーが必要です.触媒脱脂は,硝酸などの酸化力の高い蒸気を使用して低温短時間に樹脂を分解する方法です.しかし,酸化力の高い雰囲気の処理のため,使用できる金属が限られます.

脱脂工程に求められること

脱脂工程において,上記のいずれの方法でも成形工程で得た形状を保ったまま,多くのバインダーを短時間に分解することが求められます.バインダーは一般的に数種類の樹脂を混合して作られており,脱脂工程で分解されすい樹脂と,形状を保つ骨格となる分解されにくい樹脂から成っています.形状を保ちつつバインダーを分解する必要があるため,表面から徐々に分解し,生成されたガスなどの反応物が形状を破壊することなく,反応表面近傍から離脱していくことが求められます.反応が遅い方が形状を破壊することなく脱脂することができますが,生産性が大幅に低くなります.さらに遅すぎる反応時間は不要な副反応を引き起こし,内部応力増加による形状損失を招く場合もあります.形状を保っている限り,脱脂が完了していないので,ある程度のバインダーを焼結炉に持ち込むことが避けられません.

μMIM®の脱脂工程

MIMはバインダーの比率が高いため,脱脂炉と焼結炉を分けて運用するメーカーが多いですが,我々は脱脂工程と焼結工程を1つの炉で実施できる脱脂焼結炉を使用しています.脱脂後のブラウン体は非常にもろいため,複雑で微小な部品を取り扱うことが多い我々は,焼結炉メーカーの全面協力を得て開発された,ブラウン体のハンドリング無しに焼結工程に移行できる炉を,量産ライン立ち上げ当初から運用しています.どんなに脱脂炉を分けて運用しても,形状を保つために残っているバインダーは焼結炉で分解されます.そのため,焼結工程までの雰囲気をどのように制御するかが焼結品の品質に大きな影響を与えます.その高い雰囲気制御技術で脱脂工程も行える焼結炉が,我々のμ-MIM®製品の特徴である微小で複雑な形状の焼結技術を支えています.

 

参考:R.M. German, A Bose, Injection moulding of Metals and Ceramics, ISBN; 978-1878954619, 1997