技術ニュース_vol.32配信

2021/11/01

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

MIM製造における問題点と解決法 成形編

今回は一般的なMIMで発生しやすい問題点とその改善策について,成形工程に注目してお伝えします.MIMは材料から焼結体を得るまでの工程間の相互作用が大きいため,原因と結果を直結させることが難しいですが,成形工程における代表的な不具合事例と解決法を通して,我々がμ-MIM®技術として築き上げてきた力をお伝えできればと思います.

金型設計と成形問題

場合によっては焼結後に機械加工を施しますが,出来る限り最終形状に近い形状を成形工程で得ることを目標にMIMメーカーは金型を設計します.特に我々が手掛ける微小で複雑な金属部品は,チャッキングが困難であることが多いため,焼結後の機械加工が不要な設計が必須ですが,少し大きめの部品であっても,MIMの高い生産性を活かすため,機械加工を最小限に抑える検討は欠かせません. 金型のゲート設計は成形に最も大きな影響を及ぼします.ゲートはMIMで使用する材料,フィードストックのせん断応力が最も大きく変化する部分で,金属粉末とバインダーの分離が発生しやすく,ゲート付近の金属粉末密度低下による表面形状異常などの不具合につながります.製品形状の最も厚い部分に,面積の大きいゲートを設計するとせん断応力の変化量が小さくなるため,上記の不具合を抑制することができます.しかし,ゲート跡の二次加工が必要になる可能性が高いです.

成形条件による問題解決

金型のガス抜けも安定した成形には欠かせません.金型が完全に閉じた状態で効率よく金型内の空気が排出されることが,安定した成形につながりますが,金型のガス抜けの良さとバリの発生は背反します. ゲートサイズを小さくしながら,バリを抑制し,ガス抜けを確保した成形は,成形条件の適正化,特に射出速度を小さくすることで改善することができます.射出速度を小さくすることでせん断応力変化も小さく抑えられ,かつガス抜けの時間も確保できますが,材料の流動性が低くなり,ウェルドラインやヒケなど脱脂焼結後の不具合につながる,局所応力が発生する可能性が高くなります.我々はプラスチック製造で培った成形技術があるため,成形条件の適正化による問題解決能力が他のMIMメーカーに比べ高いです.

成形のプロセスウィンドウを広げる材料開発

成形経験が豊富な我々でも金型の設計と成形条件適正化だけではMIMの問題点を解決できない場合もあり,特にμ-MIM®が扱う微小複雑部品の成形ではさらに成形条件の選択肢が狭まります.それでも我々が顧客の要求に応え,安定した高品質な量産を実現しているのは材料開発,特にバインダーの開発にも取り組んできたことが挙げられます.他のMIMメーカーとは異なるプラスチック製造の背景があるからこそ,成形技術では解決できない点を見抜き,それに見合った材料開発が可能です.微小複雑部品製造に特化した我々のμ-MIM®技術による製品がこれまでのMIMの常識を覆します.