技術ニュース_vol.33配信

2021/12/22

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

MIM製造における問題点と解決法 脱脂・焼結編

前回は成形工程の問題解決法について解説しましたが,2021年を締め括る今回は,脱脂焼結工程における問題点とその解決法について解説します.

脱脂工程とその問題点

バインダーは金型内の流動性を担うため粉末冶金には欠かせない原料ですが,特に複雑で微小な形状を安定した品質で製造するMIMプロセスではバインダーの体積比率が40%程度と一般的な圧粉成形では数%であるのに比べ,高い割合で混合します.このバインダーを分解する工程が脱脂工程です.この脱脂工程においてできる限りバインダーを分解する必要がありますが,完全にバインダーを除去するわけにはいきません.焼結温度に到達し金属粉末同士が結合するまで,製品形状を保つ働きをバインダーが担っているからです.しかし,最終製品にこのバインダー由来の成分が残留することは許されないので,焼結工程でも脱脂反応を考慮する必要があります.脱脂・焼結工程ではクラック,膨れ,へこみなどの問題が発生することがあります.その解決法について紹介します.

脱脂・焼結工程の問題対策例

脱脂工程では有機溶媒,触媒,熱がバインダーの分解に使われます.熱による分解はもっとも簡単な方法ですが,脱脂時間が他の方法に比べ長くなる傾向があります.熱分解されたバインダーは気体であるため,脱脂炉内を層流のガスが流れることで効率良く脱脂されます.バインダー成分が順次,特定の温度域で分解されていくため,膨れと呼ばれる表面の一部が凸形状になる問題が発生しやすいですが,昇温速度を小さくすることで抑制できます. 有機溶媒脱脂では成形体を液体や蒸気の溶媒に浸漬しバインダーを分解します.溶媒脱脂ではクラック,膨れあるいは凹みが発生することがあります.これはバインダーの一部が膨潤する,表面付近の反応速度が大きいため表面と内部の応力差が発生することが原因です.適切な溶媒の選択と溶媒温度の管理でこれらの不具合を抑制することができます. 触媒脱脂はバインダーの昇華反応を利用してバインダーを分解するので,比較的短時間で変形を抑制した脱脂が可能です.しかし,強酸雰囲気で脱脂されるため,適用可能な金属種に限りがあります.脱脂工程でバインダー量をできる限り少なくした脱脂体を焼結炉に搬入し,焼結工程に入ります.焼結工程では金属粉末同士が隣り合っている部分から熱拡散反応により,ネッキングと呼ばれる金属粉末の接合部分が発生し,収縮,焼結が始まります.ネッキングが始まるまでに金属粉末間に残留する有機物は完全に分解され,収縮を抑制する気体は除去される必要があります.そのため,焼結工程でも昇温速度を小さくし,さらに雰囲気制御することで,必要な反応を促進します.炉内の温度差が小さく,細かい雰囲気制御が可能な真空焼結炉がMIMプロセスに採用されます. また,例えばステンレス中のクロムのように,合金には焼結時に気化しやすい添加金属が含まれる場合がありますが,添加金属が気化してしまうと特性が変化します.添加金属の損失を抑制するため,アルゴンなどの不活性ガスを使用して雰囲気を制御しながら焼結する場合もあります.

μ-MIM®︎の脱脂・焼結技術

我々のμ-MIM®︎技術は基本的に熱脱脂を採用しており,さらに脱脂工程と焼結工程が一つの炉で実施できる高真空脱脂焼結炉を使用しています.これは微小で複雑な形状の製品を安定した品質で高精度に製造するため,焼結炉メーカーの協力を得て実現したμ-MIM®︎製品の製造に特化した炉です.制御能の高い炉に加え,バインダーの開発にも尽力し,脱脂・焼結工程の変形を最大限抑制しつつ,成形時の高い流動性を持つオリジナルバインダーで,業界屈指の金属材料選択肢を提供しています.また,これまで培ってきた脱脂・焼結技術を3D金属プリンターで成形した製品にも応用しております. 参考文献;Handbookof Metal Injection Molding Second Edition

社員コラム

こんにちは.総務・経理を担当している森田です.仕事柄,迅速な対応はもちろんですが,社員が気持ちよく仕事ができるよう,社員の趣味や興味のあることも踏まえて対応するよう心掛けています. 趣味は観劇と観戦です.特にオートレースに興味があり,車好きの友人とZoomパーティーを開催し楽しい時間を過ごしています.趣味が高じてプロレーサーのロゴマークを最近導入された3Dプリンターで製造する機会に恵まれました.そのロゴマークが右の画像です.レーサー本人の希望を取り入れた作品で,大変好評です.MMJ_33