技術ニュース_vol.34配信

2022/03/16

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

金属粉末射出成形法(MIM)は他の金属部品加工法に比べ,前工程が後工程に与える影響が大きいため,各工程で管理すべき点が多い傾向があります.μ-MIM技術が取り扱う製品は特に微小で複雑な形状を持つことが多いため,より厳しい品質の管理が要求されます. 今回はμ-MIM®︎技術を支える品質管理について紹介します.

MIMの工程と品質管理

MIMの工程は大きく5つに分けられます.1)フィードストック(FS)製造,2)射出成形,3)脱脂焼結,4)二次加工,5)出荷検査です. 1)MIMのFS製造に関わる管理項目としてまず初めに原料の管理が挙げられます.金属粉末の納品検査として,金属種の確認はもちろんですが,金属粉末の粒径や粒度分布,形状の確認,適切な管理も欠かせません.同じく,適切な樹脂の管理も欠かせません.樹脂の管理を誤ると,成形不良や不純物生成につながり,焼結体の品質が低下します.混錬機と造粒機を使ってMIMペレットを製造しますが,180℃程度に加熱し,樹脂の流動性を高めて金属粉末を混練します.適切なせん断応力を与えなければ,金属粉末を均一に分散させることができませんが,意図しない副反応などが見られることもあり,条件の適切な管理が必要です. μ-MIM®︎技術が手がける金属部品は微小なので,一般的なペレット一粒分以下の体積で部品を成形することもあります.ペレット毎の均一性がその後の工程全ての品質のばらつきにつながるので,FSの品質管理には力を入れています. 2)の射出成形工程は,FSに最も大きな応力が発生する工程です.また,材料歩留が高いことがMIMの特徴ですが,ランナー部分,成形不良品は粉砕し再びFSとして使用するため,熱履歴が異なっても均質な成形体が得られるような管理が求められます.同じ体積の成形体が得られるため,重量を測定して成形体の品質を管理することが一般的です.成形体の段階でも外観検査を実施しており,樹脂が変質する脱脂工程前に検査することで材料歩留を高めます. 3)は金属部品の品質を決定する反応が起こる脱脂焼結工程です.有機物の比率が大きく減少する一次脱脂と,形状を保持するために粉末の隙間に残留している微量の有機物を完全に除去する二次脱脂で炉を分けて運用するMIMメーカーもありますが,当社では同一炉で処理しています.焼結工程では金属粉末同士が熱拡散により結合するため,顕著な収縮が見られます.この収縮で高い密度を実現しますが,同時に収縮による意図しない変形を最小にするため,焼結時に製品を設置するセッターと呼ばれるセラミックの支持台の適切な材質選択と形状設計,運用方法も安定した焼結体品質を得るためには欠かせません. 4)の二次加工はバレルやサンドブラストなどのような研磨処理,メッキなどの表面処理タッピングなどの機械加工処理,析出硬化などの熱処理が挙げられます.粉末冶金の製品表面は微小な粉末を使用しても粉末由来の凹凸がありますが,他の工法で製造された金属部品と同等の仕上がりが得られます. 5)の検査は外観検査,マイクロメーターや3次元光学測定装置,X線CT装置を使用した寸法測定,必要に応じて炭素残留量などの化学測定が挙げられます.

ISO13485認証を受けた検査システム

太盛工業は医療分野の製品の取扱が増えてきていることから,ISO13485の認証を受けた品質管理を実施しています.各工程毎に異なる管理項目があり,さらに製品毎にそれぞれの管理項目の閾値が変化します.品質管理項目を適切に運用し,これからも信頼いただけるμ-MIM®︎製品を安定製造していきます.