技術ニュース_vol.37配信

2022/06/28

Micro Metal Injection Molding

Technical NEWS LETTER
株式会社 日本マイクロMIMホールディングス 技術ニュース

技術ニュースレターやウェビナーで紹介しております,弊社の金属3Dプリンタが本格稼働します.これまでは35μmのスポット径で運用してきましたが,特別仕様の15μmのスポット径でのプリンティングシステムが立ち上がりました.

念願の15μmスポット径システム立ち上げ

μ-MIM部品の試作期間短縮のために,Incus社のLMM(Lithography-based Metal Manufacturing)方式の金属3Dプリンタを昨年から試作に運用してきました.これまでは社内で完結する試作システムがなかったため,機密情報の管理が煩雑で,かつ試作にかかる時間が長いという問題がありましたが,この金属3Dプリンタを導入してから大幅な試作期間の短縮を実現してきました.この度,μ-MIM技術で製造した部品の寸法精度や表面状態により近い品質で造形できる15μmスポット径システムの立ち上げが無事に完了しました.パンデミックによる規制でオーストリアのエンジニアの訪日が長らく叶いませんでしたが,4月下旬に立ち上げ作業,動作の確認を終えました. LMM方式の金属3Dプリンタは特定の波長を持つ光を感光性樹脂と金属粉末の混合液に選択的に照射して,光重合反応により高精度に成形体を造形しますが,この成形体は脱脂焼結工程を経て金属部品となります.脱脂焼結工程はμ-MIMで使用している装置と同じ装置,同じ技術を使えます.感光性樹脂はMIMで使用するバインダとは異なる成分の樹脂が使用されているので,脱脂工程は金属3Dプリンタ成形体に適切な条件の設定が必要ですが,焼結工程はμ-MIMで使用する条件と同一です.つまり,μ-MIMで使用する金属粉末と同じ粉末,同じ焼結技術を用いて短納期で試作品を提供できるようになりました. さらに,15μmのスポット径を導入したことでよりμ-MIMの成形体に近い成形体が得られるようになりました. 一方でスポット径の制限による表面粗度の低さ,薄肉構造の限界( 最も薄い部分で200μm程度,μ-MIMでは100μm以下), 3Dプリンタでは避けられない積層方向による機械強度などに現れる異方性などμ-MIMの試作とは異なる部分があるため,試作に先立って製品図面毎に説明をさせていただいております.

スポット径差比較事例

図は外径が約4mmのギアを15μmと35μmのスポット径で造形した成形体を脱脂焼結した試料です.μ-MIM製品でよく使用される平均粒径が7μm程度のステンレス316L粉末の事例です. 左側が15μm,右側が35μmで造形した試料ですが,ギアの歯の形状や軸の部分の形状に差が見られます. より微細な形状も精度良く造形できる様になりましたが,造形できる範囲や速度にも差があるため,部品形状によって適切な条件で造形した試料を提示できるよう情報や経験を蓄積しています. ダウンロード